歯牙移植
歯牙移植は主に、奥歯が抜けてしまったところに親知らずを移植します。
そのため、移植に使用可能な健康な8番(親知らず)が生えていることが、移植の最低条件です。
場合によっては親知らず以外の歯を移植歯として用いることもありますが、親知らず以外の歯を移植する場合には一切保険は利きません。
また、親知らずを移植する場合でも保険適用となるためには、抜歯したその日のうちに親知らずの移植を行う必要があります。
ご自身の歯を利用するため拒絶反応がありません。
インプラントに比べ治療費は抑えられますが、生着に時間がかかる傾向があります。
移植後は神経の処置行い、被せを作る必要があります。
自分の歯でもう一度咬みたい
自分の歯でもう一度咬みたい!そう願っている人がいるとしたら、是非読んでほしいと思います。
1本の奥歯を失うと、咬む力は格段に小さくなって、今まで食べることができたものが食べづらくなることもあります。
抜いてそのままにしておくと、隣の歯が倒れてきたり、咬み合う歯の位置がずれてくることがあります。知らない間に、咬み合わせがどんどんと崩れていき、様々な障害や支障が生じます。
もしも、奥歯1本を失ったら、どんな治療をするのか?そのまわりの歯の状態にもよりますが、一般的には、インプラント治療、ブッリジで橋渡しをする治療、部分義歯を入れる、などがあります。
それぞれの治療にメリットデメリットがあります。しかし、どれも人工のものを使うという点では同じです。人工歯根なのか、ダミー(歯に見立てた補綴物)なのか、人工歯なのかの違いです。
もっと大事にしておけばよかった、そう後悔する人もいるかもしれません。やはり、ご自分の歯はかけがえのないもので、失った代償は想像以上に大きいものです。もしも、もう一度ここに自分の歯があったら、と願っても、失った歯を元通りにすることは現代の医療では不可能です。
ただし、ひとつだけそれに近い治療方法があります。
それが、歯牙移植です。
失った奥歯に、ご自分の親知らずを移植する治療方法です。残念ながら、前歯や小臼歯には施術できません。なぜならば、歯の大きさが違いすぎるためです。では、どんな親知らずでも可能なのかというと、そうでもありません。もう一度自分の歯を、という治療方法を受けるには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
- 移植できる親知らずがあること
- 親知らずの抜歯が困難でないこと
- 親知らずと、失った部分の大きさがあまりにも違いすぎないこと
骨の状態や、抜歯する親知らずの位置などは、事前にCTを撮影し、しっかりと診断をします。
次に、この治療方法は健康保険が適応になるのか、という疑問があると思います。適応になります。 ただし、これにも条件があります。
- 保存不可能な歯の抜歯と、移植する親知らずの抜歯が同日であること
つまり、すでに歯を抜いてしまっている部分に、親知らずを移植する場合は、保険適応はできません。その場合は、自費診療となります。
では、移植することができるとしたら、すぐに他の歯のように咬むことができるのかというと、そうではありません。咬めるようになるまでの期間は、平均6ヶ月〜9ヶ月ほどかかります。
インプラントの場合は、4ヶ月ほどなので、移植の方が治療完了までの時間はかかります。 治療費は抑えられますが、生着(しっかりと骨に定着すること)するまでの期間が長くなります。
その6ヶ月の間、何もせずに生着するのをただ待つのかというと、そうではありません。
移植治療の流れ
- 診断
- 移植治療 *移植した親知らずを隣の歯と接着剤などでつなぎ、固定する
- 約1ヶ月後、固定を外す
- 固定を外したら、その歯の神経を取り除く治療を数回繰り返す
- その歯にかぶせものを作る
このように、歯を失ったところに、ご自分の親知らずを移植するという治療は、治療完了まで中断することなく、通院することが絶対条件になります。 何らかの理由で、途中で来院できなくなった場合は、この移植した歯も抜歯、または脱落する可能性が高くなります。
もし、転勤や引越しなどの予定がある場合は、事前に歯科医師に伝え、しっかりとした治療計画を立て、歯科医師とともに治療に取り組んでいただきたいと思います。